157人が本棚に入れています
本棚に追加
/143ページ
レイフはマックスの様子を観察した。マックスは明らかに動揺していた。
「俺の母親が死んだんだ。フロントで受け付けの仕事をしてた」
「だからウォーレンの養子に?」
「母親は元々ウォーレンの大学時代の友達だった。多分…ウォーレンは母親のことを愛してたんだと思う。父親は刑務所を出たり入ったりして…ウォーレンが母親と俺の面倒を見てくれたんだ。俺が15歳の時に父親が刑務所で病気で死んで…その時にウォーレンが母親にフロントの仕事を斡旋してくれた」
レイフはマックスの綺麗な肌を見つめた。目じりに小さなホクロがあった。
「俺と母親には優しい父親だったんだけどな…」
そうだろうとレイフは思った。マックスを見れば、両親にとても愛されて育ったんだろうと思える。
「ウォーレンは母親が死んで…身寄りの無い俺を引き取ってくれたんだ」
マックスは静かにレイフを見た。
「俺のことばっか聞かないで、お前はどうなんだ?」
レイフは首を振った。
「俺のことはどうでもいい」
「何で?」
レイフは言いよどんだ。
「俺が生まれた理由なら…多分…イギリス人の金持ちが、アメリカで女を買った時に避妊に失敗して生まれたんだ。ただそれだけのことだ」
マックスは笑った。
「じゃあ、俺はその役立たずの避妊具に感謝するよ。そいつが無事役目を果たしてたら、俺はお前に会えなかったんだろ?」
「あぁ、まぁそうだな」
レイフは笑った。生まれて初めて、生まれてきた幸せをマックスが教えてくれているように感じた。今までずっとレイフは望まれずに生まれたとして扱われてきたし、自分もそれを容認して生きてきた。だがマックスの笑顔を見ていると、今ここにいることに感謝したくなる。
それが幻想だということがよくわかっていても。
アランがレイフのマンションを訪ねてきた。
「調べた」
アランは部屋に入るとすぐ書類をレイフに渡した。
夜中の0時を回っている。レイフは文句を言いたかったが、中へ入れた。
中には会社の見取り図があった。
テーブルにつくとアランは
「ビールあるか?」
と、聞いた。
「冷蔵庫」
レイフはソファーに座って書類を広げた。
アランはキッチンに消えた。
「それ、見たけどかなり厳重だ」
アランがキッチンから話かけてきた。
「会社で狙うのは無理だ。その見取り図、どうやって手に入れたと思う?」
レイフは無言で見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!