第1章

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レイフはマックスの様子を観察した。マックスは明らかに動揺していた。 「俺の母親が死んだんだ。フロントで受け付けの仕事をしてた」 「だからウォーレンの養子に?」 「母親は元々ウォーレンの大学時代の友達だった。多分…ウォーレンは母親のことを愛してたんだと思う。父親は刑務所を出たり入ったりして…ウォーレンが母親と俺の面倒を見てくれたんだ。俺が15歳の時に父親が刑務所で病気で死んで…その時にウォーレンが母親にフロントの仕事を斡旋してくれた」 レイフはマックスの綺麗な肌を見つめた。目じりに小さなホクロがあった。 「俺と母親には優しい父親だったんだけどな…」 そうだろうとレイフは思った。マックスを見れば、両親にとても愛されて育ったんだろうと思える。 「ウォーレンは母親が死んで…身寄りの無い俺を引き取ってくれたんだ」 マックスは静かにレイフを見た。 「俺のことばっか聞かないで、お前はどうなんだ?」 レイフは首を振った。 「俺のことはどうでもいい」 「何で?」 レイフは言いよどんだ。 「俺が生まれた理由なら…多分…イギリス人の金持ちが、アメリカで女を買った時に避妊に失敗して生まれたんだ。ただそれだけのことだ」 マックスは笑った。 「じゃあ、俺はその役立たずの避妊具に感謝するよ。そいつが無事役目を果たしてたら、俺はお前に会えなかったんだろ?」 「あぁ、まぁそうだな」 レイフは笑った。生まれて初めて、生まれてきた幸せをマックスが教えてくれているように感じた。今までずっとレイフは望まれずに生まれたとして扱われてきたし、自分もそれを容認して生きてきた。だがマックスの笑顔を見ていると、今ここにいることに感謝したくなる。 それが幻想だということがよくわかっていても。 アランがレイフのマンションを訪ねてきた。 「調べた」 アランは部屋に入るとすぐ書類をレイフに渡した。 夜中の0時を回っている。レイフは文句を言いたかったが、中へ入れた。 中には会社の見取り図があった。 テーブルにつくとアランは 「ビールあるか?」 と、聞いた。 「冷蔵庫」 レイフはソファーに座って書類を広げた。 アランはキッチンに消えた。 「それ、見たけどかなり厳重だ」 アランがキッチンから話かけてきた。 「会社で狙うのは無理だ。その見取り図、どうやって手に入れたと思う?」 レイフは無言で見ていた。
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