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「「エコにーちゃ!!!」」
家の中にいたはずのファルスとフィリスが、こちらに走ってきて腹に衝撃が来る。
『 もう大丈夫ね、江湖』
気がついたら、コアに背中を押されてオモテに出てきていた。
振り向いてもそこにはコアはおらず、江湖は少し戸惑う。
「エコにーちゃ!いたいいたいの?」
「どこかわるい?カゼひいちゃったの?」
「あ、あの……すごいいきおいで飛びだして行っちゃって……」
ワーワー騒ぐ子供たちに、江湖は顔を綻ばせる。
レヴェリアルもまとめて、ギュッと抱きしめた。
涙はまだ止まらなかったけど、心はとても晴れやかだった。
「大丈夫、大丈夫よ。心配かけてごめんなさいね」
他の面々も江湖が出てきた事に気づいたのか、ホッと息を吐いていた。
「江湖」
しばらく和やかな雰囲気がその場を包み込んでいたが、突然の知らない声からの呼びかけに振り向く。
そこにいたのは、真っ白な髪に、赤い目の男。
江湖とそう歳は変わらないくらいの、どちらかといえばカッコイイよりカワイイ系の顔をしている。
「……貴方は……」
江湖が世界を渡る前に出会った、不思議な子。
確か、テス……なんだったか。
「シロちゃん?」
「……江湖がそう呼ぶなら、そう」
曖昧な記憶の中から、花枝がそう言っていたのを思い出して思わず口に出してしまったらしい。
絶対に違った気がするが、それでいいと言わんばかりにシロは頷いた。
「お前、本当にエコりんをどっかに連れ去ろうとしたわけじゃねーの?」
宙に浮いていた花枝が、江湖の前に降りてくる。
その顔は不機嫌そうで、シロの事を信用していない様子だった。
対して、シロは無表情のまま小さく首を傾げ、コクリと頷く。
「久しぶりに、会えたから」
静かな声でそう言うシロに、花枝は眉を寄せた。
その表情は、「だから何だよ」とさらに不機嫌そうだった。
「遊びたかった、だけ」
そう続いたシロの言葉に、花枝は「こいつ殴っていい?」とこちらに振り向いた。
答えはもちろんNOだ。
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