始まりの朝

2/6
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
 月曜日の朝。駅のホームには何時もと同じ時間に電車が滑り込んで来る。何も変わらない日常の、そんな風景に俺、沢田博史は軽い目眩を覚えた。 (何か面白え事ないかなあ……) 「おっす。何シケた面してんだ?ヒロ」 「渉か…」  ボーッとしながら電車に乗り込もうとした俺は、背後から肩を叩かれた。振り返ると、幼馴染みの安原渉がひらひらと手を振っていた。 「遅刻の連続記録更新中な渉にしちゃ、早い時間なんじゃねぇの?」 「まぁな。オレだって珍しく早起きする事があるんだぜ」  ―――おかしい。基本的にぐうたらな性格の渉が早起きなんて、保育園時代から11年間の付き合いの俺でさえ遭遇した事の無い事態だ。これに絡んで来る項目としては、2つある。  まず1つ目は、連続で遅刻をし過ぎて留年通告をされた。…それと、2つ目は――…、まあ、アレだ。彼女か好きな子が出来たかってトコだな。 「分かったよ。理由は話すから、そんな冷ややかな目でオレを見ないでくれよ」         「俺…、まだ何も言ってないぜ?」  渉は、俺の脇腹を肘で小突いて照れくさそうにしている。その様子で、後者の理由に当て嵌める。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!