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【あらすじ】※ノベリスタ用、ネタばれ注意※
三陸地方の北の沿岸にある小さな町。
震災の5年前、私は町でたった一つの普通高校の吹奏楽部に入部した。
コンサートマスターの先輩は、私の初恋の人。でも、親友も同じ人に片思いしていた。
「どっちが付き合うことになっても、恨みっこなしね」
働く場所も遊ぶ場所もロクにないけど私達はこの町が好きだった。しかし過疎の町ゆえにいつかは離れなければならない。
合宿、演奏会、コンクール、海…恋をしながら、一緒に笑った仲間達との季節。
恋なのか親切なのか?時折微妙なサインを出してくる先輩に一喜一憂する私。
二年生の夏、初の東北ブロック大会への進出をかけた合宿。
その時、先輩は私にだけストラップをくれた。
親友は先輩に「好きな人がいるから」と振られていた。親友は「先輩が好きなのは『私』ではないのかと言う。それでも一歩が踏み出せない私。
合宿から帰ってすぐ、父親が入院して私は家業の手伝いのためにコンクールに出場することなく部を辞める。
冬、先輩は心配して一度だけ訪ねてきてくれた。しかし私は不満や愚痴をぶつけ合うだけの祖母と母への嫌悪感から、自分の悩みをさらけ出すことができない。
結局何もないまま先輩は卒業し、学生結婚をする。
私は父親の退院後、県外の短大に進学し、幼稚園の先生になった。祖母が亡くなった時、処分できなかったストラップとも決別する。
私の卒業式の日、故郷を震災が襲う。
私がやっと帰ったのは夏休みだった。
瓦礫の処理は進んでいたが海沿いの景色は大きく変わっていた。部を辞めてまで支えた祖母の店も流されていた。
私は、地域の後輩のために楽器を集めるボランティアを通じて先輩や幼なじみに再会する。
私は、まだ先輩が好きだった。
黙祷のサイレンが鳴る。今はただ、先輩の家族の幸せを祈りたい。
故郷の海を見ながら、私は前に進もうとする。
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