契約 ノ 終ル 世界 デ 。

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契約 ノ 終ル 世界 デ 。

妹のテアは明日が誕生日。 前夜、 僕は贈り物をした。 テアが以前、大好きだと言っていた景色を、今夜もう一度見せてあげたくて。 子供だけの外出、しかも夜なんて。 危ないから禁じられているのだけれど。 今夜だけは両親が許してくれた。 この先、大人も子供も、だんだんと忙しくなるらしい。 そうしたら、もうあそこへは行かれない。 テアの好きな場所へはもうたぶん、二度と行けなくなるのだ。 だから両親も特別に許してくれたのだろう。 移動手段は翼を持つ僕の親友。 彼は皆にとても信頼されているから、両親も反対はしなかった。 なるべく帰りが遅くならないこと。 それだけは守るようにと言われ、僕とテアは家を出た。 風の速さで移動する、翼を持つ親友の背に乗っていても、僕たちの家からその場所はとても遠い。 「テア、寒くない?」 「大丈夫よ。イオこそ気分悪くない?」 「大丈夫。昼より夜のがまだ楽だ」 テアの好きな風景、夜の時間にだけ見える場所で良かったかも。 ……いつからだろう。 柔らかな友の羽毛の上で、僕はふと 思った。 いつからだろう。 この世界の 真昼の日差しを浴びると、 身体が痛いと感じるようになったのは……。 ……*****…… 「わあ、イオっ、見えてきたよ、星海!」 僕たちの眼下に、貴石を散りばめたような光の海原が見えてきた。 翼を持つ友はゆっくりと下降し、高い樹に止まった。 そこが今夜の目的地。 テアへの誕生日プレゼント。 僕らが「星海」と呼んでいる、光の海原を一望できる場所だった。 翼を持つ友の背から、僕らはゆっくりと太い幹へ移った。 「うわぁ……凄いね。ホントに綺麗」 テアが幹に腰掛け、うっとりとした顔で言った。 「うん、そうだね」 確かに綺麗だ……。 「けどさ、……やっぱり冷たい感じがするよ、ジンコウのアカリってやつはさ」 目の前に散りばめられた輝きは、自然の光ではなく「ヒト」という生き物が造りだした明かりなのだ。 「でも父さまは、あの灯りの中には暖かな営みもあるんだって言ってたわ」 「うん……」 でもそれはほんの僅かな数の、輝きの下だけじゃないかな。 僕は心の中だけで呟いた。
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