12人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
契約 ノ 終ル 世界 デ 。
妹のテアは明日が誕生日。
前夜、
僕は贈り物をした。
テアが以前、大好きだと言っていた景色を、今夜もう一度見せてあげたくて。
子供だけの外出、しかも夜なんて。
危ないから禁じられているのだけれど。
今夜だけは両親が許してくれた。
この先、大人も子供も、だんだんと忙しくなるらしい。
そうしたら、もうあそこへは行かれない。
テアの好きな場所へはもうたぶん、二度と行けなくなるのだ。
だから両親も特別に許してくれたのだろう。
移動手段は翼を持つ僕の親友。
彼は皆にとても信頼されているから、両親も反対はしなかった。
なるべく帰りが遅くならないこと。
それだけは守るようにと言われ、僕とテアは家を出た。
風の速さで移動する、翼を持つ親友の背に乗っていても、僕たちの家からその場所はとても遠い。
「テア、寒くない?」
「大丈夫よ。イオこそ気分悪くない?」
「大丈夫。昼より夜のがまだ楽だ」
テアの好きな風景、夜の時間にだけ見える場所で良かったかも。
……いつからだろう。
柔らかな友の羽毛の上で、僕はふと 思った。
いつからだろう。
この世界の
真昼の日差しを浴びると、
身体が痛いと感じるようになったのは……。
……*****……
「わあ、イオっ、見えてきたよ、星海!」
僕たちの眼下に、貴石を散りばめたような光の海原が見えてきた。
翼を持つ友はゆっくりと下降し、高い樹に止まった。
そこが今夜の目的地。
テアへの誕生日プレゼント。
僕らが「星海」と呼んでいる、光の海原を一望できる場所だった。
翼を持つ友の背から、僕らはゆっくりと太い幹へ移った。
「うわぁ……凄いね。ホントに綺麗」
テアが幹に腰掛け、うっとりとした顔で言った。
「うん、そうだね」
確かに綺麗だ……。
「けどさ、……やっぱり冷たい感じがするよ、ジンコウのアカリってやつはさ」
目の前に散りばめられた輝きは、自然の光ではなく「ヒト」という生き物が造りだした明かりなのだ。
「でも父さまは、あの灯りの中には暖かな営みもあるんだって言ってたわ」
「うん……」
でもそれはほんの僅かな数の、輝きの下だけじゃないかな。
僕は心の中だけで呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!