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霊安室に向かう寝台から視線が外せない。
俺が、俺自身で体を動かせない。何かに掴まれて動けない。目を閉じることも…
「助けてくれ」その言葉さえ出せない。大声で叫んでも口から洩れるのはかすかな息だけ。
霊安室に向かって進む看護師越しに寝台が見える。その寝台から何かがこぼれ落ちた。
看護師たちは何も気づかないのかそのまま進む。
こぼれ落ちた塊は、もぞもぞと動き膨らんだり縮んだりを繰り返す。
廊下の先で寝台と看護師たちが扉の中に消える。
うごめく塊が見慣れた形に姿を変える。その姿は大きな嘴と濡れたように艶を持つ羽毛に包まれた姿。
2、3歩勢いをつけるとこちらに向かい突っ込んでくる。
鳴き声一つあげず羽ばたきながらカラスがこちらに飛んでくる。
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