第八章

2/3
403人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
「二人組の、辻斬りですか?」 「ああ。知らねぇか?」 土方の問いに、夜は今しがた聞いた情報を頭の中で照らし合わせてみる。 事の起こりは数週間前。 京に、二人組の辻斬りが現れたとこの事だった。 どちらも小柄で、真っ白な面をつけ、笠をかぶっている。 二人とも夜と同じく一本差しの刀。 被害にあったのは、幕府の者から平民まで様々。 一人、新撰組の平隊士からも犠牲者が出たことで、新撰組もいよいよ本腰を入れ始めたようだ。 山崎は以前から調査しているものの、足取りが掴めずに、進んではいないらしい。 未来を知る夜ならこの二人組に関して何か知っているかもしれない。 そう思い、土方は聞いたのだろうが。 「……聞いたこと、ありませんね」 「歴史に名を残すほどの奴等でもねぇってことか」 「恐らくは」 「……まあいい。お前も調査に加われ。先に入ってる山崎と協力しあうように」 「はい」 その場はそれで終わり、夜は部屋を後にしたものの。 「……」 夜の中には、ある一つの仮定があった。 (ただ、知らないだけなら問題はないけど) 否定しきれない、可能性。 (……歴史が、変わってる?) 新撰組の隊士を倒す辻斬り。 それも特徴的な二人なら、史実に残っていてもおかしくはない。 そうなれば、歴史が変わってきていると考える方が自然である。 (……歴史が歪みを正そうとしているなら、妙ね) 夜は既に幾度も歴史に関わっている。 例えば佐々木や山南の件がそうだ。 彼等に大して何らかの影響があるならまだしも、今回の事件は少し違っていて。 (とすると、もうひとつ考えられるのは…) ある意味一番自然な道理だが、まさか。と否定する。 (有り得ない……私以外の未来人が関わってるなんて)
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!