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「あ、もしや、結婚決まって解禁にしたの?」
私が冗談を言うと彼女は私を軽く睨んだ。
「私だってたまには酔いたいの」
「へえ、珍しい」
私が言うと、優香は少し考えた様子でゆっくりと口を開いた。
「……美尋みたいになってみたかったの」
「私?」
私は訳がわからず素っ頓狂な声をあげた。
「何それ? 優香が私に?」
私が笑うと「そうよ」と、優香も笑った。
「自分のやりたい仕事に就いて、実績残して……仕事上がりに豪快にビールを飲むの」
優香が頬杖をついて火照った顔を手のひらで支える。
普段ビールなど飲まないのでいつもより少し酔っているようだ。
「いいな……デキる女って感じ」
彼女の口角がふわりと上がる。
しかし、その笑顔は
どこか儚げだった。
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