私の知らない色

3/12
11741人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「今日は早く帰るんじゃなかったのかよ?」 背後からの突然の声に椅子の上でバランスを崩しながら慌てて振り返った。 「いたの? 驚かさないでよ」 「いちゃわりーかよ」 「悪くないけど、向こうで寝てると思ったから」 彼は昨日もほとんど徹夜状態だった。 この事務所では徹夜の仕事も珍しくない。 そのため、休憩室に置かれたソファはいつしか仮眠用に使われるようになっていた。 「メチャクチャ眠い。でも、やんねえと」 そう言ってあくびをしながら私の向かいで椅子を引くのは 私が働くデザイン事務所、アートプレイデザインのデザイナー 眞辺隼人(マナベハヤト)。 名古屋市中区に建ち並ぶオフィスビルの一室が私たちの仕事場だ。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!