最終章・殺してやる!

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   ひとりごとのようにつぶやいた声に、お師匠さまは反応しなかった。ぽんぽんとオレの肩を叩き、離れた場所へと歩いていく。最期の別れをしろという意味だろう。冷たくなったジュリアをみても、まだその死を認めたくない。  どうしてそんなに悲劇の主人公になりたがるの? いつかのジュリアの言葉がよみがえってきた。誰だって、悲劇の主人公になりたくなんかない。日常に変化はなく退屈な日々でも、平穏に暮らしていければそれが一番いいに決まっている。ジュリアはいまのオレをみてどう感じるだろうか。ねがわくば、またあの日のように、くだらないと笑っていてほしい。  天を仰ぎむせび泣くオレは、かすかな違和感の正体にさえ気づけずにいた。ジュリアを失った悲しみはあまりに深く、オレの感覚を鈍らせている――このときは単純にそう思っていた。              第一部 完  第二部【零下の口唇】へ続く。
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