Prologue

2/3
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
桜の花びらが、強めの風に舞う。 同じ風に、少し伸びた髪の毛を空へ向かって飛ばされながら、私は久しぶりの通学路を眺める。 ーー春。 誰もが心ときめかせる季節。 周りをゆく人達も、お互い久しぶりの再会を喜びながら、どこか浮き足立っている。 その例に漏れずに、私も空と桜のコントラストがきれいだな、なんて柄にも無く上を見上げていた。 ふと視線を通学路に戻すと、いろんな人の笑顔が見える。 あ…、あの子、新入生なのかな。 初々しい黒髪の女の子に目が止まる。 昨日の入学式で仲良くなったのだろう 見知った顔を見つけて、恐る恐る話しかけている。 あっちは、カップルかな? 彼女が、前を歩く彼氏に駆け寄り、ぽんっと背中を叩く。 振り返った彼の顔が、一気に笑顔になる。 会ったの、久しぶりだったのかな。 それとも、ついこの前も会っていたのかな。 二人の様子を見ていても、分からない。 だって、好きな人に会えたら、いつだって嬉しいもんね。 「ひなっ!!」 不意に。 よく通るその声は、風に乗ってまっすぐ私の耳に届いた。 振り返った先には、その場にいる誰よりも目立つ、カラフルなチェックのワンピースに、ピンクのライダースを羽織った姿。 太陽に照らされて金色に輝く髪の毛を揺らしながら、私のところまで軽やかに駆けてくる。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!