第2章

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「うーん……道具を使うのはイヤですか。なら、江越さんには落ち着くまで我慢してもらうしかないですねえ」 「えっ!?」 「だって、ほら」  津川が指を奥へ押し込む。 「ひっ!」 「ね? 僕の指だとここまでが精一杯でしょ?」  そう言って中へ入れた指の先を思わせぶりにチロチロと動かしながら、津川は江越の顔を覗き込んだ。 「どうします?」  江越に問いかけながら津川がスッと目を細める。  含みを持たせたように口角を上げて微笑む津川と目があった江越の中が、飲み込んでいる指を無意識にきゅっと締めつけた。 「…………あっ」 「どうかしましたか?」  優しげに問う津川の声に、どうすればいいのかわからない江越は真っ赤になった顔をただ横に振るだけだ。  あともうちょっとで奥まで届きそうなのに届かない。例えるなら、蚊に刺された場所を思いきり掻きたいのに、あとちょっとのところで手が届かなくて肝心の刺された場所の手前しか掻けないといったところだ。  頬を赤く染めながら、津川の手に前を擦りつけるように腰を揺らめかせる江越のことを、津川がじっと見ている。  自分がとんでもなく恥ずかしいことをしているという自覚が江越にはあった。だが、そんな自分の痴態を津川に見られていると思うだけで江越の中はますます疼き、前が痛いほどに張りつめるのがわかった。 「…………津川くん……頼む、何とかしてくれ」  江越は女性との関係など、この四十年で数えるほどしかない。  その数少ない経験からセックスというものは、友人たちが言うほどいいものでもないなあというのが江越の率直な感想だった。なので今、津川に触れられて、こんなに感じてしまっている自分が江越には信じられない。 「津川くん」  これまで経験したことのない状態に陥ってしまっている江越には、目の前にいる新人しか頼る人間がいない。  江越は縋るように津川のことを見つめた。 「――――江越さん」 「津川くん、もうダメだ……助けて」 「いいですけど、道具を使うのはイヤなんでしょう?」  道具だなんて聞いただけで何だか痛そうだ。痛いのが苦手な江越が小さく頷く。 「なら…………これなら?」  津川は江越の手首を掴むと、すでに臨戦状態になっている自分の足の間へと江越の手を導いた。 「――あ」  津川の熱に触れた江越が潤んだ目を見開いた。
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