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 実際私はそこまで怒ってはいなかった。金を返せぬのもこいつの財布事情を良く知っている私にとって仕方ないと思っていたし、着信に気付かないのも、こいつが携帯を携帯しない事をしっているから今更だ。  社会人になって二年、中学からこいつは人としてあまり成長していない。土壇場キャンセルに至っては、これが初ではなく既に数回されている。それをこうして定期的に謝りにくるあたり、まだ愛嬌があるではないか。高杉の必死の言い訳を聞くのも楽しい。  金を返せと言われた高杉は、思った通り汗を額に浮かべながら財布を取り出した。中を開くと、千円札が二枚と一円玉硬貨が三枚だけ入っている。私が貸した金額は二千円だ。 「返してもらっていいか」  目線だけを高杉の方へ向けながら問う。 「来月までまって!」  分かっていたとも。ここで二千円を返してもらって三円だけ残し、今月の半分をそれで過ごせという程私は鬼ではない。それよりこいつは、いつも金欠の癖に、何故痩せないのだろうか。 「いいだろう。しかし明日は私に付き合ってもらう」  嬉しそうな顔をする高杉に、まるで保護者のような気持ちを抱きながら明日を待つことにした。
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