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そんな事をしている間に、人魂は西尾さんから離れ、壁をすり抜けて部屋から出て行ったのだ。
「あ!西尾さん!出て行っちゃいましたよ!?」
「何だって!?まだ髪型が……くそっ!仕方ない」
いつものコートを羽織り、帽子を被って準備が整った西尾さんと一緒に、私は部屋を飛び出した。
「俺はお嬢ちゃんを看てるからな!」
村田さんは部屋に残る。
西尾さんと違って、安心して任せられるよね。
靴を履いて玄関を出て、階段を下りて道路に出た私は、空を見上げた。
二階の高さにいる人魂の痕跡は正直わかりにくくて、探すのに苦労するけど……。
「音彩ちゃん!どっち!?」
「えっと……あ、あっちです!」
薄く、消えそうな痕跡の先を目で追った先に、人魂が見えた。
もう、随分離されてしまったけど、十分追い付ける速度だ。
走り出した西尾さんに続き、私も走る。
夕方に、西尾さんに大きく引き離された事が脳裏を過るけれど、今回は不思議と私に合わせて走ってくれているみたいだ。
「まだ真っ直ぐで良いの!?」
「え?あ、はい!」
そうか、西尾さんは見えないから、私がいないと追えないんだ。
改めて私の重要性を認識したその時だった。
ゾワッと、背筋を撫でるような気配に包まれたのは。
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