危険な夜

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「ぐへっ!」 と、小さな声と共に人形から押し出された人魂のような球体。 ふわふわと私達の付近を漂いながら、何か文句があるかのように西尾さんに近付いた。 「……何も言わなくなったな。音彩ちゃん、どうだい?何か見える?」 そう言い、私に人形を向ける。 「えっと……人魂みたいなのが西尾さんの顔の辺りにいます。私にももう、声は聞こえませんね」 じゃあ、もうこれはいらないなと言わんばかりに西尾さんは人形を床に置き、椅子から立ち上がると、慌てて服を脱ぎ始めた。 「な、何してるんですか!いきなり!」 ズボンを脱ぎ、日中に穿いていた革のズボンを手に取った。 村田さんも、西尾さんが変な事をしないようにと立ち上がったけど、そういうわけではないようだ。 「何って、決まってるじゃないか!そいつに案内してもらう為に外に出るんだから、こんな格好では出られないだろ!」 ま、まあ、それはわかるかな。 疑ったりして悪かったかな。 「それに……スウェットなんかで、もしも外で天使に遭遇したら、俺は俺を許せそうにない。出会いはいつも唐突に、劇的に訪れるものだからね」 ビシッと、腕を交差させて自分の肩を抱いて、西尾さんはフフッと笑って見せた。 ……悪かったなんて思わなきゃ良かった。
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