仇討ち屋

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仇討ち屋

男の首元には冷たく光る細い金属が迫っていた。それがあるだけで、首元以外の体の全てが現在の季節とかけ離れた冷気を与えていた。 「た、頼む・・・・・・助けて、くれ。わ、わ、私が何をした・・・というのだっっ」 だが、その冷気とは逆に体からは油のような汗が止め処なく溢れる。 「その発言がもう駄目だよなぁ。自分は関係ねぇんだよっていう逆ギレ感満載の発言だわ」 突きつけている方の男は煙草を吹かしながらその細い金属を微動だにさせない。 「お前の選択はまぁ大きく分けて2つだわな。一つはお前らの怠慢全てを認め、隠している真犯人捕まえて、尚且つお前ら自身への正当な罰を課す。免職くらいが妥当だろ」 「そ、そんな」 「もう一つは死ぬことだ。勿論俺が殺す。お前ら殺しても真犯人の調べくらいついてっから真犯人も殺す。依頼者は公の裁きでなくとも殺せればそれが一番とのことだ。どちらを選ぶよ。命を取るか、死を取るか」 男の発言を遮って身を裂くような言葉を投げかけた。その男の表情には怒りも悲しみも哀れみも何もなかった。 「わ・・・わ・わ、わかった・・・!必ず・・・言うとおりにするから!」 「・・・・・・ま、そうすることを願ってる」 その時はじめて口元を緩めた。
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