仇討ち屋

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仇討ち屋。 この世には如何ともし難いほどの憎しみ悲しみ苦しみに駆られることがある。友人が殺される。クラスからいじめに遭う。警察の怠慢により、未然防止できた事件がそのまま発生してしまう。また、解決できた事件が未解決になる。子供が拉致される。物を盗まれる。脅される。騙される。犯される。 彼らの共通点は‘弱い’ということ。 しかし、弱いことは罪ではない。その弱さにつけこむ者が悪なのだ。 その悪を討つことを生業とする。それが仇討ち屋。 屋。とは名乗っているものの。従業人は5人程しかいない、マンションの一室を借りた小さな会社である。荒霧 飄太(あらきり ひょうた)はその一人である。 「お疲れ様です。荒霧さん」 「お疲れ」 仕事から帰った荒霧はもう一人の従業員、晴海 睦美(はるみ むつみ)から熱したおしぼりを受け取り、手と顔を拭いた。その熱が溜まった疲れを瞬間的に拭ってくれる。 「どうでした?」 「どうって・・・・ま、今のとこは順調。警察が何の動きも見せなければ警察も真犯人も殺すだけだ。で・・・・・この子はまだいるのか」 荒霧が視線をやった先には、ソファに座った少女が一人。今回の依頼主はこの少女である。 修学旅行に行っている間に、家族が何者かに惨殺された。犯人は父が金を借りていたヤクザの連中と予想され、証拠も多く残っていたが、警察は何も動かずに集団自殺又は一家心中と断定した。 マスコミやネットでも警察は大きなバッシングを受けた。それでも何の動きもなく、報道は静まった。が、一人だけ怒りを抑えることのできない人間がいた。 それが彼女だ。 「ええ・・・・・引き取ってくださる親戚もいないようで・・・・・・現在も一人で親戚からの援助でアパートで暮らしているとのことで」 「・・・・・どうすっかなぁ」
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