+それは緩やかに変わっていく+

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 婚姻届けの提出。  それは、人生の一大事の筈なのに、役所に婚姻届けを出すのはあっけなさ過ぎて拍子抜けしてしまうものだった。    しかも、時間外だから守衛のおじさんに渡すだけ。  なんてあっさりしているんだろう。緊張感から解放されたのに、あまりのあっけなさに何の実感もわいてこない。 「なんか、変な感じだな」  変な感じ。婚姻届けを提出して、車に戻ってきたこのタイミングでそれを言われると何となく不安になって真一郎に視線を向けると、眼鏡の奥の瞳が面白がるような笑みを浮かべているのが見て取れた。 「だってお前、北川だろ?」  喉を鳴らして笑いながらそんな事言われたら、翠だって「自分だって新島先生じゃん」と思ってしまう。 「新島先生」  しばしの沈黙の後、静かな低い声が帰ってくる。 「どうした? 北川」  七年前に何度となく交わしたこの会話がどこかよそよそしく感じる事に微かに胸が痛む。だけど、同時に感じる『今』の幸せ。  それは、確かに変な感じだった。
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