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「ねぇ、なんで指輪も?」
役所に向かう車の中、なんとなく落ち着かない気持ちで、右手で左手の薬指にはめた指輪に触れる。
「右手のだとサイズ合わないだろ?」
それはその通り。今まで右手の薬指につけていた指輪は、左手の薬指につけるにはワンサイズ大きい。
「そうじゃなくて、結婚指輪ならもうあったでしょ?」
「あぁ、式のこととかなんも考えて無かっただろ?式挙げるかは、また後で考えるとして。
式のときに、使用感溢れる指輪もどうかと思って。
だからって婚約指輪ずっとつけてんのも……無しだろ」
結婚式だとか、その時に指輪がどうだとか、そんなこと全く考えてもいなかった。
言われてみたら、確かに結婚式をするのなら、真新しい指輪の方が良い。
「真一さんもつけたらいいのに」
翠としては、正直な気持ちでそう言ったのだけど、真一郎は嫌そうな表情をみせた。
「いらねぇよ。35のおっさんが指輪してようが、してまいが誰も気にしないだろ。
でも、まぁ、お前にはつけさせときたかったから」
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