止まらない想い

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こんな時間からオフィスに入館する私に、通用口の警備員はどこか不審気に首を傾げた。 帰路を急ぐ行員の群れを逆行して、私はいつもは滅多に乗らない低層階用のエレベーターに乗り込む。 営業本部のフロアに降り立って、いくらか照明が落ちた廊下を突き進んだ。 昼の時間なら、たくさんの来客で人通りの絶えない廊下。 数億、数十億ってマネーが取引される銀行の花形オフィス。 仕事以外の用件でここに来たことはない。 こんな静かな空気を感じるのは初めてで、ほんの少し来たことを後悔した。 大事な話だし、鳴海がまだ残業してるならここで逢えるって思った。 もし鳴海がまだ仕事中だったら、プライベートの用件で訪れた私を不愉快に思うかもしれない。 そう思ったら、逸る気持ちも少しは醒める。 せっかく来たんだから。 鳴海がまだ残っていれば、せめて話がしたいってアポだけでも取って帰ろう。 自分にそう言い聞かせて歩を進めて中に入ると、鳴海のデスクの方向に目を向ける。 そこに鳴海の姿は見つからなかったけど、デスクの上にはノートパソコンが開いたまま。 まだ書類もちらかってるし、残業中なのは明らかだった。 休憩かな。 そう思って、私はフロアを出ると給湯室に向かった。
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