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ホテルからの電話で、初めて気付いたなんて情けない。
身の周りのことだけで精一杯で、式場のキャンセルをすっかり忘れていた。
もう二ヵ月を切ったとはいえ、直ぐに手続きすればキャンセル料だってそうかからずに済む。
さっきの電話でキャンセルの手続きを申し出れば、それで済むはずだった。
だけど……。
一体、どういうこと?
プランナーの話を聞き進めるうちに、相槌すらまともに打てなくなるくらい、不可解な気分が強まるだけだった。
話が見えな過ぎる。
私が一緒に打ち合わせしていた時よりも、明らかに話が進んでいたからだ。
料理のこと。ワインのこと。
私が打ち合わせに参加していた時は、まだそんな話を漠然としていた段階だったはず。
なのに――
もっともらしい理由を付けて、とりあえず電話を切った。
大混乱したまま、鳴海に電話を掛けたけど、プランナーが言った通り全く繋がらない。
どうしようか迷った。
でも時間を置いて今の勢いが冷めてしまったら、鳴海に問い質す勇気も失ってしまう。
知らないフリをして放っておけばいいことかもしれない。
どうして式場がキャンセルされないまま、むしろ話を進めているのか。
そう、話が進んでる。
それがわかるから、どうしてもスルー出来る話じゃない。
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