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少し感慨深げだった成子だが、朝を迎える頃には、既にいつも通りになっていた。
いつも通り、美しく、いつも通り、淡々と、祈りや客の接待などを終えたあと。
成子は、みなを前に脇息に寄りかかり、だらけていた。
「ああ暇ね、暇。
そこ此処をうるさい怨霊どもがうろいている以外には。
ねえ、道雅やっぱりいい人になりなさいよ。
そしたら、呪って殺すから」
「貴女が呪ってどうするんですか。
そして、今、気づきましたよ、斎王様。
その想定だと、私、今、いい人じゃないですね……」
力なく言う道雅の後ろで、庭の菖蒲が一斉に首を揺らしていた。
艶やかな光景だった。
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