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「あのさ、ひょっとして緊急事態じゃないの?俺にこんなことさせといて、まさか世間話がしたかったとか、そういうこと?」
「違うっつーの。あーしカナギリにひとつ報告があって、それで探してたんじゃん。つか何処にいるかわかんねーって、会える方法ガチで考えたし」
「で、考えた末が夜中に人間コピー機って・・労力の無駄遣いだろ。それにこの世界は紙だってわりと高いし」
「あーそれは大丈夫。あーしなんか、手で触った物を何でもコピー出来るんだって。だからこれくらいヨユー」
イエーイって感じでギャルピースを決める美加ヶ原に、俺は開いた口が塞がらなかった。
今しれっととんでもない情報が耳に入ったのだ。
やっぱりか。やっぱりあるのか、王国冒険者にはチート能力が。
「なんだよそれ。そんなのもうファンタジーの世界で想像力爆発の最高能力じゃん。聖剣エクスカリバーの夢の二刀流じゃん。なんだよもー美加ヶ原ー、ずるいよ羨ましいよわけてくれよー」
「カナギリさあ、そんなことよりあーしの話を聞くのが先っしょ」
「俺にとってはそんなことじゃないですけどね!!元王国冒険者に裏方二号の俺の気持ちはわかんないだろおいおいおいおい」
「つか何で泣いてるわけ?はいはいわかったからー。後で死ぬ程慰めてあげるから、とにかく話を聞けっつーの」
「うう、なんだよその面倒な奴をあしらう態度は。仕方無いだろ。俺なんてチート能力どころか、冒険者ですら無いんだよ?俺だって武器が欲しいんだよ!!剣とか盾とか。レジェンドオブクロードとか」
今直俺の心の奥底で煮えたぎっている、冒険者に対しての熱い憧れが爆発する。異世界っていうのは【気持ち】の強さで優遇の度合いを決めるべきだと提唱したい。
俺だったら無駄な伝言用紙を大量コピーするより、もっと魔王討伐に役立つアイデアが思い付いた筈なんだ。
本当にもうっなんなんだよ美加ヶ原ーっと、嫉妬と羨ましさの大いに込められた強い視線を向けると、
「知らね」
と、冷たく一蹴されてしまうだけだった。
そしてちょっと不機嫌な顔になって、俺のほっぺたを両サイドから引っ張ってきた。
「はーなーしーをきけー」
「いっ──ふあい。いふあいふはひゃめふえ。ふあひふぇふおふぇん」
言葉にならない謝罪をすると、美加ヶ原はあっさりと手を離してくれた。頬をむにむに上下に動かして、残った痛みを緩和させようとする俺が、美加ヶ原に一言文句を言おうとした、その時だ。
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