Ⅲ.【情けは人のためにはならない】

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ムストンダストンポポヴィッチは、相変わらず喋る順番が固定されていた。必ず一人が話すと他の二人も続くから、直ぐにこっちも言い返したいのに、変に待たなきゃいけないもどかしさがある。 この時は反論しておなじみの口論に発展するよりも、俺も含めた四人で一斉に美加ヶ原に注目していた。そして俺のクラスメイトは細い腰に手を充てながら、言った。 「むーぽん、だすぽよ、ぽぽさん、カナギリはあーしのえっとー・・故郷の知り合い?って感じなの」 「故郷・・ってのは前話してたあれか?ニッポンとかって国の」 「ああ、あの話か。俺はてっきりミカちゃんの男なんじゃないかって、心配しちまったぜ」 「本当にもう、只の同郷だって話ならぁ、こんな死体漁りとは付き合っちゃ駄目よ、ミカちゃん」 「おい、ちょっと待て。この会話・・というか、違和感有り過ぎだろ。むーぽんって」 思わず口に出た俺のツッコミは簡単にスルーされる。 「カナギリ、あーしさ、もうお金なくてやべーってなってて、なんかおっきい建物の前でうあーってなってたらさ、キレーな女の人が・・それがーまじでやばいくらいエロいお姉さんだってー、むっちむちなの。おっぱいとかマジでやばかったし」 代わりに自分の胸を持ち上げながら、美加ヶ原は知らないお姉さんの特徴を俺に教えてくる。 その他三人の視線は釘付けみたいだったが、俺はそんなクラスメイトを直視出来ずに視線を逸らした。 美加ヶ原さんも負けてなさそうですけどね。 「いや、お姉さんのことは今はどうでもいいって。後でじっくり・・じゃなくて、何で美加ヶ原がこいつらと一緒にいるのかってこと」 「だから、キレーな女の人が『お姉ちゃんに任せてー』って、なんかギルド?ってとこに連れてかれて、受付の女の人と話してたらなんか急に言葉がわかるようになってー。んでむーぽん達を紹介されて、ぱ・・・・あれ、なんだっけ?ぱん・・」 「パーティーな!!パーティーだろ、絶対。やめてくれよ。女子高生がいきなり際どいワード言っちゃうの」 「そーそーそんな感じ。これから一緒に街の外でみぽりん?とかってやつと戦えーって。えーめんどーいとか思ったんだけど、なんかあーしが何にもしなくても皆が勝手に戦ってくれるし、別にこれでいいかなーって」 「ゴブリンな」と、これも一応訂正しておいた。 つまり美加ヶ原はこのトリオと正式な冒険者パーティーを組んだってことだ。リセリアの話だと、冒険者の今後の成長や進路を選択する上で、パーティーをくむのは必要不可欠らしい。単独でペコドルチェを倒す経験を幾ら積んでも、何れはパーティー戦の適応力が嫌でも求められるようになる。 街を出れば、単調な行動で対処出来るモンスターなんて殆どいないらしいから、大変だよな冒険者って。 まっ美加ヶ原に関しては【そういう意図】でパーティーを組んだわけじゃないし、本人はこの街を出る気さえ今のところ無いのかもしれない。 暫くの身の安全と収入源を得たって話なら、美加ヶ原にとっても悪くないんだろう。 ひとつ気になることはあるけど。
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