8. 管理区域

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突然、長内の胸ポケットから、カーペンターズの懐かしい名曲、『Top of the World』の陽気なメロディが流れ出す。 長内はスモールタブレットを取り出すと、通話ボタンをタップして耳に当てた。 「はい、こちら池袋2班。……Sルート、了解」 短い会話を終えるとスモールタブレットをしまい、インカムを手に取る。 「野郎ども、長内だ。今日はSルートとの指示があった。ぶっとばして行こうぜ!」 車のスピーカーから、他の車に分乗した隊員達の、口々に大声で応答する声が聞こえる。 まるで学生のドライブのようなノリだ。 「じゃあ、隊長。関越に向かいます」 高村はそう言うと、ハンドルを切って車線を変えた。 長内は、ひとり呆然としている達也に解説する。 「再生施設までのルートは全部で7通りあって、出発してから、どのルートを使うか本部から通達が来る。事前にルートが漏れるリスクを防ぐ為だ」 達也は既に、我慢の限界の域を越えていた。 「いいかげん隠さないで教えてもらえませんか。何故、これほど慎重な手順を踏むのか。軍隊並みの装備が必要なのは何故なのか。そしてそもそも……、敵は一体何者なのか。何も知らずに行動を共にできません」 長内はうなずくと、達也をなだめるように笑顔を見せた。 「これから説明しようとしてたところだ。あと数時間は安全だからね」
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