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さっきまで押し当てていた腕に、手を添える
だけどさっき瞳を覗いたようには
しっかりと顔を上げられなかった。
そんな私を見下ろす視線が包んで暫くすると、
彼はゆっくりと歩き出した。
ワインバーの前を通り過ぎた時、
すぐ後ろでガチャリとドアが開く音が聞こえる。
(――――――――――――)
僅かに肩が跳ねて、腕を持つ手に力がこもった。
遠ざかる女性達の声を耳に、
判らないくらい小さな安堵の息が漏れる。
――――大丈夫
私は捨てたんだから
もう何もあの人に残していないわ
今日はちょっと疲れてるからおかしいだけ
私が欲しいのは
あの時からずっと変わらないでしょ
私は彼に寄り添って、ただ前向いて足を進めた。
”―――もしも…
この人が私に落ちたら
リードの御曹司は何をしてくれるんだろう”
そんな心躍る想像で
濁った頭の中を塗り替えながら
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