渋い現実#2

29/32
408人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
彼の瞳には、完璧な笑みを浮かべる私 そんな私が微かに揺れた時、 「……まぁ そんな所」 強く吹いた風が彼の声を攫う。 そのまま歩き出す背中を見ながら 言いようのない寂寥感が私を包んだ。 (…判ってたじゃない ) 苦い笑みを残しつつ、ゆっくりと歩く。 と、足を止めた彼が私を振り返って、 小さく息がつかれた。 隣に並んだ私の瞳を覗いて 長い指が頬をそっと撫でる。 ”――――やめて ” そう思ったと同時に体が影に隠れて、 伏した目が大きく瞳に映った。 唇の端ぎりぎりを掠めるキス 何度も落ちてくるのに、 肝心の場所は触れないそれが …ただ歯痒かった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!