302人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
瞼を閉じれば、富士川さんの柔らかい笑みと
別れ際の言葉ばかりが頭を巡る。
『詰めが甘い』と、
何度自分を責めてもどうにもならないけれど、
感じていた不自然な違和感をもっと気に留めて、
心を傾けていれば、こんな事にはならなかったんだろうか
「…何をしてるんだか…、」
自嘲の言葉すら胸を抉るには十分で、
体が動かない。
それからどれくらい経っただろうか
うっすらと目を開けると、
鈍色の天井が少しぼやけていた。
指先が冷え、微かに身じろぎをした時、
放っていた携帯が音を立て始める。
「………………………」
無造作に携帯に手を伸ばす。
と、画面に浮かぶ名前を目に、
留まっていた血液が大きく流れ出すのを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!