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ゆっくりとボタンを押し、
携帯を耳へと押し当てる。
「………真白 」
静かに呼んだ名が、凍りそうな胸を揺らした。
だけど耳にはざわめきすら届かずに、
闇のような静寂が包み込む。
「…今、どこ?」
そう口にしたと同時に、
止まりかけていた時間が動き始め、無意識にベッドを抜ける。
車のキーを掴もうとサイドボードに近付いた時、
「……そうね、
今…あなたのマンションの下なの」
届いた予想外の声にぴたりと足が止まった。
冗談交じりの、静かな声
だけどそれが嘘じゃないと、
声色や抑揚から直感的に悟った。
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