想いの先は

4/18
302人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
ゆっくりとボタンを押し、 携帯を耳へと押し当てる。 「………真白 」 静かに呼んだ名が、凍りそうな胸を揺らした。 だけど耳にはざわめきすら届かずに、 闇のような静寂が包み込む。 「…今、どこ?」 そう口にしたと同時に、 止まりかけていた時間が動き始め、無意識にベッドを抜ける。 車のキーを掴もうとサイドボードに近付いた時、 「……そうね、  今…あなたのマンションの下なの」 届いた予想外の声にぴたりと足が止まった。 冗談交じりの、静かな声 だけどそれが嘘じゃないと、 声色や抑揚から直感的に悟った。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!