302人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「 1125室 」
「…え?」
「1125室だから、
上がって来て」
それだけを口にすると、
動悸を逃がすように辺りを見渡した。
上がって来てと言ったのは
『女は入れない』と告げたこの部屋
自分の意思で俺の元に来るかどうか
これが本当に、最後の賭けだった。
待つ間の一秒一秒がいやに遅くて、
焦燥でかぶりを振った時、部屋に軽い呼び出し音が響く。
「………………………」
エントランスのロックに指を伸ばし、
深い息を吐いて窓の外に目を移した。
白く濁った窓の外には
ぼんやりとした街灯の灯りが揺れていて、
そのまま目を伏せると、
俺はゆっくりと玄関へ足を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!