椿荘と冬桜 #2

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どちらにせよ、 成立させる気もする訳もない話 視線を落として書類をまとめ、席を立つ。 そんな俺を横目に、祖父は何か言いたそうにした。 だけどただ小さく息をついただけで、 部屋を出る俺の背を見送る。   デスクに戻り、時計に目を移すと、 時刻は22時46分 佐藤にメールを送信し終えた時、 鞄の中で携帯が震え始めた。 「もしもし?」 画面に浮かぶ名前に、一呼吸置いて電話に出ると、 良く馴染んだ声が耳を通り抜ける。 「おー、朔! 今ええ?」 「……あぁ、久しぶり」 背もたれに体を預け、窓の外に目を向けると、 見慣れた景色の中に12月の寒さが滲んでいた。
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