第29章 一歩先へ

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「困らせたいわけでもなく、困った顔を見たいわけでもなく。私には脈が無い事を悟りました」 「それは、ご自身の中で折り合いがついているのですか?」 俺の言葉に、海斗さんは一度視線を向けたが、そのまま微笑むとジョッキに戻した。 「私も、強引に追いかけるほど若くはない。それに、美紅は白石さん、あなたへの気持ちをきちんと明確にしました。 今は、それで十分満足です。あとは、白石さんあなたを信じるのみです」 穏やかに語られた胸の内。それをここまでさらけ出すほど、俺に託す美紅への気持ちは真っ直ぐ透明でどこまでも深いのだろう。 美紅には、本当は海斗さんのような察することの出来る男がいいのだろうな。 思わずそんな弱音が出てしまいそうになるほど、海斗さんの器の大きさ、そしてふたりの歴史を感じる。 「白石さん、諦めてくれますか?」 「いえ、初めからその選択肢はありません」
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