第一章

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皆が梅雨明け宣言を今か今かと待ちわびるこの時期、俺の学校でも他校と同じように期末試験が行われていた。 俺――佐東登志雄(さとうとしお)は、試験最終科目である現国を多少苦労しつつもこなしている最中だ。 今回の手ごたえは全体的に悪くない。 むしろ中間試験と同じで、手堅く上の下を保守しているはずだ。 俺にとっては十分というよりとても好ましく、言ってみれば最適の位置付けだ。 これ以上の成績だと、周りの注目を集めてしまう可能性がある。 『佐東って意外に頭良いんだな』なんて言われる程度がちょうど良い。 そう、これは何もかも計算の上での結果という訳だ。 残り十分にもなると、時間が余った生徒達がそれぞれ伸びをしたり筆記用具をしまったりする音が、まるで試験から解放されるまでの秒読みを表すかのように響き始める。 俺も同様にシャーペンを机の上に置いて、軽く伸びをしながら窓の外を眺めた。
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