偶然のアナタ

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家に帰っても、一人。 親戚の間でも、一人。 学校の中でも、一人。 …僕は、独り。 無心で歩いていたせいで、 雨が降ってきたことに気づくのが遅れた。 小雨ならよかったのに ざぁざぁと、僕の身体を濡らしていく。 雨音が、僕を笑っているみたいで。 思わずしゃがみ込んだ。 道行く人は、誰も僕のことなど気にもせず、通り過ぎていく。 その人たちにも、赤い糸が、小指からどこかへと繋がっている。 …なんで? なんで、僕には赤い糸がないの? なんで、僕は独りぼっちなの? しゃがみこんだまま、僕は涙を流した。 涙は、雨と共に、僕の頬を伝って落ちる。 …あぁ。 なんて冷たいんだろう。 寒い。寒い。 僕は…独りぼっち。 「…どうしたの?こんなところで。」 「…?」 びしょ濡れな僕に、誰かが優しく声をかけてくれた。 恐る恐る顔をあげると、眼鏡をかけた若い感じの男の人が、傘を僕の上にさして、立っていた。 「そんなところでうずくまっていたら、風邪ひくよ?とりあえず、入りなよ。」 「…え?」 「ここ、俺の店。」 指さされた先には、小さな喫茶店があった。 「ほら、これでも飲んで。身体温めなきゃ。」 誰もいない店に入れもらい、その男の人は、僕にバスタオルと温かいミルクを出してくれた。 「…いただきます…あ…美味しい…」 「だろぅ?身体に染み渡るだろぅ?」 にこにこ笑いながら、僕の飲む姿をずっと見ていた。 本当に…甘い… また、涙が零れた。 「ど…どうしたんだい?さっきも…泣いていたみたいだし…」 慌てて僕の頭にかぶせてあったバスタオルで、涙をぬぐってくれた。 その、手にも… 赤い糸があった。 「ぼ…僕、ずっと一人で…独りぼっちで…そう思ったら、悲しくて…両親もいない、友達も…なにも…僕には、何もなくて…」 赤い糸もなくて。 誰とも、繋がることができない。 ぐすぐすと泣きじゃくる僕の頭を、その人はよしよしと、撫でてくれた。 「…独りぼっち?そんなこと、ないだろう?君を心配してくれる人、いるんじゃない?」
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