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「ハル、ほら」
少しずつ落ち着きを取り戻していくハルの前に、僕は小指を立てて見せた。
「男と男の約束。嘘吐いたらハルの目の前で針千本飲む。針万本でもいいよ」
冗談っぽく笑い、僕はウインクをしてみせる。
「だから信じて」
悲しそうなハルの表情が、少しだけ柔らかくなったような気がした。
「……うん、分かった。とうやのこともいつきのことも、信じる」
ハルは小さく頷くと、僕を真似るように細い小指を立て、おずおずと僕の小指にそれを引っ掛けた。
「ありがと、ハル」
そしてその約束のもと。
ハルは僕に、かつて自身が住んでいた家の電話番号を教えてくれた。
「俺が言うと言ったのに」
ハルが寝た後、その経緯を僕から聞いた依月さんは少しの不満をのせた表情でそう言った。
「ハルのことは皆で悩んで考えたいじゃないですか」
そう言えば納得したのか、依月さんは黙り込む。
何か言いたそうではあるが、返せる言葉はないらしい。
僕に先を越されたのがよっぽど悔しかったのだろう、むくれている依月さんを見て心の中でしめしめと笑った。
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