サバンナでも同じこと言えんの?

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 ここは新宿歌舞伎町にあるとある地下闘技場。男達の熱気がむら立つ観客席は酸欠寸前のすし詰め状態だ。そのほとんどが血に飢えたガラの悪い若者ばかりで、中にはダークスーツを着た本職とおぼしき人物までもが試合を見守っている。  リング上では両腕の肩から手首まで刺青を入れた腕っぷし自慢の喧嘩屋とキックボクシングのアマチュア団体から選抜された格闘家が健闘を繰り広げ、しばし場内からは「折れ!」や「殺せ!」などといった怒号が飛び交っている。  一方、選手の控え室では筋肉隆々の男達に囲まれて、その場に似つかわしくない小柄な少女が自分の試合を今か今かと待ちわびていた。前髪に黒いメッシュの入った薄い黄褐色のショートヘアーで肌はエキゾチックな褐色をしている。両手をショートパンツのポケットにしまってうつむき気味にベンチに座り、靴の爪先でせわしなくコンクリート製の床を叩く。 「緊張しているのかい? 相棒」少女の隣に座る身の丈二メートルはある大柄な男性が言った。 「はっ」と、少女は鼻で笑い飛ばす。「思ってもねえこと言うなよ泰造。相手はたかが人間だぜ?」 「そいつは結構だ。だがいいか? 汝殺すなかれだ」 「めんどくせえんだよ。そんなの相手次第だろ」  泰造はそんな少女の様子に深くため息をついた。「これだからサバンナ育ちは……」 「動物園で見世物だった奴に言われたかねえよ。それに、そんなに気にするならてめえが出りゃいいじゃねえか」
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