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明日奈さんはしばらくうつむいて黙っていたけど、
「あっ……!」
突然病室から走って逃げていった。
肩同士がぶつかって、よろめく。
一瞬だけ合った目は涙で濡れていて、悲しみに満ちていた。
そして、病室にはふたりきり。
「真幸くん……、――っ!」
名前を呼ぶと、手を強く引かれ、あっという間に真幸くんの腕の中に。
「えっ、あ、……あの……」
動揺しながらも、気づいた。
抱きしめる手が震えてる……?
「ごめん……、俺のせいだった」
「え?」
それは、まさか、明日奈さんがさっき言っていた……?
「違うよ、真幸くんのせいじゃない……。真幸くんは、守ってくれた」
「大丈夫?じゃあ、もう痛くない?」
あたしは首を振る。
「最初から、痛くなんてなかった」
背中に手を回して、抱きしめ返す。
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