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目を閉じていたけど、唇を外すことなく、失敗しなかった。
真幸くんが起きていたら、自分からなんて中々いけないけど……。
真幸くんだって、眠っているあたしにしたんだから、おかえし。
唇を離して、目を開けると、
「……ひめ……?」
真幸くんと、目が合った。
寝ているはずの真幸くんと、……目が合った?
「!!」
思わず、勢いをつけて身を引く。
起きた!
今!?
どんなに大きな声で呼んでも起きなかったのに、ちょんっと触れるだけの唇の感触で?
「ひめー……」
まだ半分以上は起きていないみたいで、真幸くんはとろんとした目であたしを見る。
起きた……。
あたしの名前、呼んでる。
改めて実感したら、嬉しくて、止めたはずの涙がまた溢れる。
一度は離れたけど、またベッドのそばにいく。
真幸くんが、布団から手を出して、あたしの髪に手を伸ばす。
「けが……してない?」
怪我したのは、真幸くんの方だよ。
「うん……っ、してない……」
何であたしの心配してるの。
「よかった」
全然よくないよ。真幸くんばっかり傷ついてるのに。
言いたかったけど、真幸くんが笑うから、涙ばっかり出てきた。
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