chapter12 輪郭

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「さて。乙黒さん。早速なんですが」 「ああ」   乙黒が乱雑された中から、ファイルを引っ張り出した。 「10年前に宵崎高校で自殺した生徒の情報だろ。 もっと手応えのある仕事が欲しかったね。 ほらこれだよ」   机を挟んで陽太たちの向かいに座り、 乙黒はファイルを向けてきた。 「ありがとうございます。助かりました」   霧島がファイルを受け取ろうとしたとき、 乙黒はファイルを引き戻した。 「おっと。ちょっと待った」 「!」 陽太たちは驚き、目を丸くする。 「こんな昔の、さらに特に事件性も無い自殺した生徒の情報の詮索なんて。 今時の高校生の流行りとは思えないね」   乙黒は頬を若干釣り上げて、陽太たちを見た。 「何が目的なんだい? お前ら」 「……教える義務は無いはずです」 「ふーん」   乙黒は懐から封筒を取り出し、机の上に置いた。 「んじゃこれ返すわ」   封筒の中身は依頼金であった。 「な――」   霧島から珍しく驚嘆の息が漏れた。
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