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「さて。乙黒さん。早速なんですが」
「ああ」
乙黒が乱雑された中から、ファイルを引っ張り出した。
「10年前に宵崎高校で自殺した生徒の情報だろ。
もっと手応えのある仕事が欲しかったね。
ほらこれだよ」
机を挟んで陽太たちの向かいに座り、
乙黒はファイルを向けてきた。
「ありがとうございます。助かりました」
霧島がファイルを受け取ろうとしたとき、
乙黒はファイルを引き戻した。
「おっと。ちょっと待った」
「!」
陽太たちは驚き、目を丸くする。
「こんな昔の、さらに特に事件性も無い自殺した生徒の情報の詮索なんて。
今時の高校生の流行りとは思えないね」
乙黒は頬を若干釣り上げて、陽太たちを見た。
「何が目的なんだい? お前ら」
「……教える義務は無いはずです」
「ふーん」
乙黒は懐から封筒を取り出し、机の上に置いた。
「んじゃこれ返すわ」
封筒の中身は依頼金であった。
「な――」
霧島から珍しく驚嘆の息が漏れた。
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