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3月1日……この日は俺たち3年生の卒業の日。3年間お世話になった先生……そして3年間過ごしてきた校舎に別れを告げる日。……俺は1年間しかお世話になってねーけど。
《卒業生、入場》
スピーカーを通して体育館内に響く声。そして入場する卒業生……。もちろん、その列に俺はいない。事情を知っている者達は皆、浮かない顔をしている。
プログラムが次々に消化され、卒業証書授与。それぞれのクラスの代表が卒業証書を受けとる。1組は涼子さん。2組は出流。3組はレコさん。
クラス全員の名前が呼ばれるが、俺の時は沢村先生が欠席って言った……悔しそうに。
プログラムは生徒会長挨拶へ。
名前を呼ばれて、輝了高校生徒会長、斎藤レコさんが壇上へ。
「まず、在校生、そして先生方、我々卒業生を祝っていただいて大変感謝しております。ただ……腑に落ちない点が1つあるので話します」
レコさんは唇を噛み締めた。そして数秒の沈黙のあとに口を開く。
「私が生徒会長に任命された時、密かな目標を立てました。それは、誰一人欠けること無く今日……卒業式に参加する……というもの」
それを聞き、サヤや泰史……俺が卒業式に参加できない事情を知るものは悔しそうな表情を見せる。
「それは、とある荒くれ者たちの手によって無情にも果たせなくなったわ……。今日参加できなかった3年2組の波崎光刃くん……彼も輝了高校を卒業する卒業生……みんな、それを忘れないでいてあげて」
レコさんがそう言うと、生徒たちから拍手が沸く。なんていうか……ちょっと不謹慎かもしれないが、まるで俺が死んだみたいな口振りだな……。
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