13.第三段階

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駅から少し離れた公園の近くまで辿り着いたニゴちゃん達。道路を挟んで、少し離れた所で様子を伺う。 樹林の葉は落ちて街灯が点在するが、真っ暗な印象の淋しい公園だ。 パトカーが1台停めてあり、警官が目撃者を探していた。 公園の出入口に設置してある鉄製の門柱が折れ曲がり、車両が突っ込んだ衝撃の強さを物語っている。 「あそこで男女が車にはねられたって話よね・・」 樋口刑事のお姉さんが現場を見て呟いた(つぶやいた)。 ニゴちゃんは僅かな明かりの下でノートを開いて公園のスケッチをしてる。 「響子さん、どうですか?」 母に周囲の様子を訊ねたニゴちゃん。 「そうね・・  危険な霊は居ないみたいよ。」 公園の周辺を見渡した母。 都会の亡者や童子の姿は無いようだ。 「濁川さん達は、ここで待っていてくれる?」 「はい。待機してます。」 母が公園の方へ向かって行った。 その姿がニゴちゃんに見える。 「凄い・・  やっぱり飛ぶんだ・・」 オーラがシンクロされているニゴちゃんには母が宙空に浮かんで事件現場に近づいていく姿が見えた。今まで背後に憑かれていたので声だけしか聴こえなかったが、白装束を着て足元が透けて、まさに絵に書いたような幽霊の姿だ。 警官が歩行者に聴き取りをしている場所を横切り、折れた門柱の所まで移動してきた母。 周囲をくまなく観察する。 犠牲になった男女の霊体の姿も無かった。 「ここも思念波が無いのね・・」 呟いて門柱に手をかざす。 「やっぱり、おかしい・・」 公園の入口から、中に入るが、怪しい霊体の姿も無かった。 中心に建っている街灯の周りだけがポツンと明るい空間となっている。 事故の後で封鎖され、誰も居ない公園。 シーンと静まり返って、かえって不気味だ。 ベンチの周囲を探るが、犠牲者達の行動の痕跡も無い。 「証拠隠滅か・・」 長期間の滞在は母だけでなく、ニゴちゃん達にも危険だと察知して、公園を後にした。 「濁川さん、帰りましょう!」 母が探査を切り上げて戻って来た。 「どうでしたか?響子さん?」 「電車で報告するわ。  ここに長居するのは避けましょう!」 「了解しました!  お姉さん帰りましょう!」 「ええ!」 ノートを仕舞って駅へ引き返すニゴちゃん達。
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