巨人の春。

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 もうすぐ入学式が始まる。  香川くんと指を絡めてホールに向かう。  「…ねぇ小春、付き合った記念にキスしようよ」  香川くんが足を止めるから、私も止まらざるを得ない。  「ヤダよ。誰もいないとこがいいよ」  ここ、どこだと思ってるんだよ、香川くん。   普通に人いっぱい歩いとるやんけ。  「じゃあ、学校終わったら俺ん家行こうよ。俺、1人暮らしだから」  「家から全然通える距離なのに、なんで1人暮らし始めたの?」  『引っ越す』とか言うから、てっきり県外に行っちゃうんだと思ってショック受けてたんだから。  「1人暮らししてみたかったから。で、来るの? 来ないの?」    香川くんが、繋いでいた手を揺らし、返事を急かす。    イヤイヤイヤ。てか理由、そんだけかよ。結構落ち込んだってゆーのに。  それに、返事なんか聞かなくても分かるでしょうが。  「…行きたいです」  香川くんの部屋、見たいに決まってるじゃん。  「大歓迎です」  香川くんが、照れまくる私を見ながら笑った。
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