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ご機嫌な課長に手をひかれるように部屋を後にした。
昨日の夜の記憶が全然ないから、娯楽施設とはどういった場所なのか分からずに興味津々だけど、私の想像よりもずっとキレイだった。
回転する巨大でピンクなふかふかのベッドってわけでもなかったし……。
天上にミラーボールとかもなかったし……。
部屋にプールがあったりとかもなかったし……。
コスプレ用の服もなかった気がするし、大人の玩具の自動販売機もなかった。
私の想像の中の娯楽施設は、その名前の通りに娯楽で溢れた空間だったのだけど……私の狭い交友関係の中で知った知識は偏っていたのかしら。
狭いエレベーターで課長と下の階へと降りると、これまた狭い小部屋のようなところで小さな窓口のようなところでお金を払うシステムのようだった。
ふーん……
「おい、帰るぞ!」
手慣れた感じのする課長の姿が面白くないなんて言ったら、きっと困るんだろうなぁと思いつつ外に出た……
「まぶしっ!!!」
朝陽がさんさんと降り注いでいる。
あまりの眩しさに目を瞑ってしまった。
娯楽施設の中は、閉鎖的で外の天気なんて全然分からなかったから……異空間だったのだ。
目を開けて課長を見たら、課長がこっちを見下ろして笑ってる。
「何ですか?」
「いやー、どうだったんだろうって思ってな。お前、初めて来たって言って昨日の夜、はしゃいでたからさ」
記憶にないってば。
「思ったよりも娯楽な要素が少ないことに驚いた」
「ぶはっ、何だよ、娯楽な要素って!」
仕方がない。
私が想像していた娯楽な要素を説明してみた。
「ミラーボールとか、回転するベッドとか」
「ぶっはっ!!! 見たことないっての! そんなの、俺だって見たことねーっ!」
ゲラゲラ笑う課長の言葉に、面白くない気持ちがヒートアップして思わず課長の脛を蹴ってしまった。
「うおっ、いてーだろ!」
その場でぴょんぴょんと飛び跳ねる課長を置いて、おそらく駅があるであろうと思う方向に私は歩き出す。
そして、置いてきた課長を振り向いて言ってやった。
「ばーか!」
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