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昨日と同じ服を着る違和感。 汚れていると思われる下着をまた着る屈辱感。 齢30にして初めて経験する(課長のお宅に泊まったのは抜きにして)外泊。 もっと嬉し恥ずかしって感じかと思っていたんだけどなぁ…… 脱衣所の鏡の前で、自分のバッグに入っていた化粧道具でせめてもの悪あがきをしてみたり。 今からどこへ行くのかと聞かれたら家に帰るだけだけど、まさかこんな時間によれよれの服を着てノーメイクなんていかにも朝帰りっぽくて恥ずかしい。 うん、嬉し恥ずかしって言うよりも恥ずかしいしかない。 何事も経験だと思うけど、朝帰りなんて経験は積まなくても良いことを悟ったぞ。 「みゅー! そろそろ行かないと追加料金取られるからさっさと用意しろー」 ……はい、用意してます。 課長の素敵なところは、私が化粧をしているときには絶対に邪魔しにこないところだ。 そこだけは、好きだ。 あぁ、そこだけって言うよりはそこもだった。 道具をしまい、忘れ物がないか一応サラッと脱衣所を見た。 忘れてきたのはきっと羞恥心だ。 酔っていたとはいえ、自分から課長を娯楽施設に誘うなんて…… いやいや、前向きに考えれば課長以外の人と娯楽施設にいたわけじゃないから最悪の展開は回避してるのか。 脱衣所の扉を開けたら課長が正面の壁にもたれ掛って待っていらっしゃった。 しかも、私のコートとチクチクマフラーを手に持って。 なんかキュンと来たよ。 普通の顔して立っていたら、割かし普通に恰好良いような気がしてきた。 さすがスーツマジック。 そしてさすが、コートマジック。 「どうも……です」 コートとマフラーを受け取ろうとしたら、まるで執事のように私のコートを広げてくれる。 誰も見ていないと分かっていても照れるのだけど、その厚意に甘えて背中を向けて自分のコートに腕を通した。 すると課長がコートのボタンも留めてくれるし、チクチクマフラーも首に巻いてくれた。 変な感じ。 「おっし、これで俺がつけたキスマークが見えなくなったな♪」 ナヌ!? 「ぶはっ、冗談だっての。見えるとこにはつけてないってーの♪」 ……見えてない場所につけたのか……。
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