7283人が本棚に入れています
本棚に追加
/1318ページ
駅が見えてきたら、急にお腹が空いてきた気がする。
あぁ、どこかでモーニングでも食べてから帰ろう。
「おいっ、待てって!」
待てと言われて待つぐらいなら置いていかない。
だから待ちません。
課長の足音が近付いて、手を握られた。
でも、私の機嫌は直らない。
握られた手を振り払ってみた。
「なー、それ、嫉妬?」
振り払ったはずの手をまた握られる。
そして、チラッと見上げた課長の顔はすこぶるご機嫌そうで、それもまた気に入らない。
「ふんっ、かーわいー」
……そんな言葉に絆されてなるものか。
「それとも、俺がみゅーの想像を笑ったから怒ったの? ミラーボールと回転するベッド!」
課長が笑い出した……。
「プールもなかったし、コスプレの服もなかった。それに、木馬もなかったし、自動販売機もなかったじゃん!」
「ぶはははははっ。どこで覚えてきたんだよ、それ!」
「……女子会」
「ぶはっ。おもしれー! お前の友達、おもしれーやつばっかだなっ!」
そうだよ、私の友達は確かにちょっと面白い人ばっかりだよ。
私なんて一般的な小市民でつまんない人間だもん。
「類は友を呼ぶってやつだ、お前があったまおかしいからっ!」
ナヌ!?
私の頭はおかしくない。
むしろ課長の頭の方がイカレポンチだ。
いやいや、課長の頭がイカレポンチで類は友を呼ぶんだったら、私もやっぱりイカレポンチ!?
オーマイガー!!!
私は小市民のはずなのに……
課長と付き合ったばかりにイカレポンチ街道をまっしぐら……
「腹が減った。モーニングでも食うか」
「ですね」
ニッコリ笑った課長の顔に、つい私も笑い返してしまう。
さっきまでイカレポンチだと思っていた相手なのに。
でも、まぁ、朝から二人でモーニングとか。
幸せだと思ったんだからいいや。
最初のコメントを投稿しよう!