プロローグ

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厳つい顔をした男とまるで人形みたいな少年が、風呂屋の二階でくつろいでいる。客がまだの時間帯の筈が、何時もより少しだけ混んでいた。厳つい顔をした男は、加納屋とだけ名乗った。此処で初めて座敷でくつろいでいらっしゃる面々が、このお人形さんの目が、ガラス玉である事実を知った。 「最初の幽霊騒動は、君が起こした?そう言う話なんだね?じゃ、栄助とか言う少年は?全くの無実と言う事になるが?そのお話を奉行所でお話出来無いって言うのは何故なのかな?」 悪戯に関しては、認めたが殺人に迄発展したとなれば話は違う、燃えた屋台の中から人が出た話を聞いてしまった。 「確かにこれでは、屋台を燃やす必要は何処にもねぇがな…三島屋がわざわざ出張する理由もなくなるんだよ…。どーも犯人は誰かさんに手柄を立てて欲しいらしくてな…おきみを巻き添えにした可能性があるんだ。これでは栄助が犯罪者になってしまうなんて、洒落になんねーだろう?」 犯人が手柄を立てて欲しい人物は、もうとっくに大金星を上げているが。この場合は…この人形のような少年の名前も栄助と言う。速見栄助、都合上速見家の次男坊となっている。但し戸籍の上では、栄助の父親の欄は空欄のままだった。母親信乃だけが武家の二女として戸籍にある。速見家そのものが、存在不確かな武家なのである。代々速見家の当主がこの時代には、珍しい女当主だと言う事をずっと隠さなければならなかった。その当主の名前が速見紅だった。 「吉ちゃん、お紅と同じ髪だから自慢してた。だからあの旗本の子達じゃないかなんて話をしていただけだよ。闇討ちなんて卑怯な事吉ちゃんはしないよ!」
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