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二人の元へ急いで戻ると、アリスと少年は人一人分の間隔を空けてお互いに気まずそうに店の前で立っていた。
「よく素直に待ってたな。ほら、これ持っていけ」
俺は本の入ったビニールの手提げ袋ごと少年に差し出した。
少年はそれをひったくると、鋭い目つきで俺に忠告してくる。
「貰えるものは貰っておく。それだけだ。これでほどこしてやったとか考えるなよ」
その言葉にアリスの眉が歪んだ。
「あんたねっーーー」
俺はアリスを手で制して遮る。
「そうだな、貰えるものは貰っておけ。学べるものは幾らでも活用しろ」
その単語帳だって、お前が生きてくために必要なものだったんだろう? 学は力だ。
少年は俺の言葉が予想外だったのか、しばらく押し黙った。
無言でビニール袋ごとシャツの背中にしまう。
「......」
「どうした?」
何か言いたそうな顔をしている。
「......ミカヅキ」
「あ?」
「名前......あんたは?」
少年ーーーミカヅキが俺の目をじっと見つめてくる。
「ユキ、でいい。親友はみなそう呼んでいる」
「あんた友達いないでしょ」
「......いちいち水を差さないでくれ」
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