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断られても仕方ない。ただ食事に誘っただけ。
なにも気にすることはない。
「いいよ」
「え?」
思わず、驚いた声が出てしまった。
まさかいいと言ってもらえるとは思わなくて、口も少し開いたまま。
「なんだよ。お前が誘ったんだろう?」
「あ……はい」
「どこの店?」
「え……」
「考えてないのか。なら、俺が行きたい所に連れていく」
彼の口角が上がって、こちらを見つめている目が細められる。余裕の表情。
わたしは恥ずかしくなった。
誘うなら、しっかり計画を立ててからにすればよかった。
本当に思いつきだったのだ。早瀬さんのことを考えていたら声をかけたくなってしまって。
気づいたら早瀬さんを追いかけていた。
勢いというものは怖いなと思う――
早瀬さんが自分の車にわたしを乗せて連れてきてくれたのは、綺麗な洋風のお店だった。
静かだけど堅苦しい所ではなく、個室で落ち着いた雰囲気の場所だった。
がっつりご飯ものもあれば、お酒も充実しているしサイドメニューも種類がある。
頼んだメニューはサラダと、お酒のお摘まみ。
早瀬さんは運転があるのでお酒ではないが、わたしは軽く一杯だけ飲むことにした。
食事をと誘ったはずなのに、これではお酒を飲みにきたみたいだ。
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