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「待って、みはねちゃん!」
シューン、とリハビリジムの自動ドアを踏み開けた美跳を呼び止めた、ミドルトーンの青年の声に彼女は振り向いた。
「わすれものー!!」
廊下を足取り軽くかけてきた青年は、右手に持った青いファイルを振りかざしながら慌てて叫んだ。
「え?…わ!」
スラリとした身体をトレーニングウエアの上下で覆うこの青年は鳥越蒼太。
美跳と同じくこの春大学生になったばかりの、アスリート系アルバイト青年だ。
「ほらコレ、大事な商売道具っ」
【メニュー管理No.6】というラベルの貼られたファイルを、彼は美跳の頭の上にふわりと乗せ、ニッと白い歯を見せ笑った。
「ごめん蒼太くん…鮫島さんには内緒にしてくれないかな」
「無理ー。みはねちゃん追っかけて俺がスタッフルーム飛び出すとこ、所長見てたもん」
「ひえ!ヤバイ~!!」
あいたた、と頭を抱えた美跳に、蒼太はあははと破顔した。
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