プロローグ

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―アレスティア王国近郊・ルルイエ孤児院― アレスティア王国の隣に建てられた、街一つと同じ面積を持つ孤児院の一角、霊園の隅に建てられた小さな墓の前に、この大陸では比較的珍しい、黒髪の老人が1人佇んでいる。 白いスイセンの花束を供え、手を合わせる。線香の煙が揺らめき、空へと昇っていく。 「もう7年になるか、早いもんだなアインス」 老人は手を合わせながら、昔を懐かしむようにポツリポツリと語り出す。かつて人生の大半を共に過ごした、大切な人との思い出を振り返るように。 「すっかり話し込んでしまったね。最後に1つ、今の世な中で俺に出来ることに一段落ついたよ。だから、そろそろそっちに行こうと思う。だから、もう少し待っていてくれ」 老人はその歳に似合わぬ軽い足取りで、霊園を後にする。 それから3日後、老人1人自室にてひっそりと息を引き取った。
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